人間がビールをみつけたのは、おそらく偶然のことからと考えられています。
食べ残したブドウが皿の中で発酵してワインに、飲み残した蜂蜜が鉢の中でミードに・・・。
そして同じょうに、パンの食べ残しを水の中に入れておいたら、いつしかビールになった・・・。
ビールの起こりは、たぶんこんなことからではなかったかと想像されます。
そもそも、ビールなるものがこの世に初めて登場したのは、いまから約5000年も前のことといわれています。
ビールに関する世界最古の記録は、紀元前3000年ごろ、シュメール人が住んでいたという北部イラクのジャルモ遺跡から発掘された粘土板。
これは当時の生活様式のあれこれを記録した板碑だが、このなかにビール醸造の模様がはっきりと描かれています。
その記録によると、シュメール人たちは、エンマーという一種の小麦からビールを製造していました。
そして、色つけには大麦をまぜ、味つけには蜜や肉桂のほか、さまざまな 香料植物を用いていたようです。
しかし、当時のビールにホップまたはこの種のものが使用されていたかどうかについては、はっきりしていません。
シュメール人にとって、ビールは生活上欠くことのできないもので、給料の一部にビールの現物給与が行なわれていました。
その量は階級によって違い、勤労者階級は1日2リットル、中級官僚階級は3リットル、高級僧侶や地方行政官などは5リットルといったぐあいでした。
また、宗教国家であったシュメールの都市では、人が死ぬと家族は坊さんに420個のパンと60リットルの毅物をはじめ、着物や小やぎ、寝台のほか、ビールを7瓶も奉らなければならなかった。
したがってシュメールの寺院には、ビールがいつもたっぷりあったということです。
このシュメール人のビールづくりは、その後そのままバビロニア人に、さらにアッシリアへと受けつがれていきました。