ニトログリセリンは、イタリアのアスカニオ・ソプレス教授によって、1547年に発明されたものだが、ちょっとした振動にもすぐ爆発するので、その使い方がとてもむずかしいのが難点だった。
油田の大火災を消すために、ニトロをトラックで運ぶスリルを描いたフランス映画『恐怖の報酬』(イブ・モンタン主演)を、覚えている方も多いだろう。
輸送に当たった二台のトラックのうち一台は、ちょっとした振動で、あっという間にあとかたもなくなった。
この爆発薬に目をつけて、なんとか鉱山やトンネル掘りに利用したいと考えたのが、スウェーデンの化学者、ノーベルである。
彼は一心に研究を続けたが、このため二度にわたり研究所を焼き、弟の生命まで失うという犠牲をはらった。
しまいには危険人物というので、町から追放されるはめにもなったが、それでも彼は研究をやめなかった。
ある日、彼がニトログリセリンのかんを荷車か らおろしていると、かんからこぼれたニトログリセリンが、砂の中にすいこまれていった。
「おや?」 と思い、その砂をいじってみると、砂は固まっている。
そこでこんどは石で、その固まりをたたいてみたが、爆発しない。
「そうか!ニトログリセリンは土にしみこむと、爆発しにくくなるのだ」
こう気づいた彼は、さらに研究を重ね、ついに珪藻土がもっともよいことを発見したのである。
ノーベルの発明したダイナマイトは、5年もたたないうちに、欧米のいたるところに工場を建てねばならぬほど、各地から注文が殺到したという。
人類の偉大な発明、ダイナマイトも、こうしたささいな偶然が、そのきっかけになって完成した。
発明をこころざす人たちにとって、どんな偶然も見のがせぬわけである。

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