洗たく用でなかった石けん

旧約聖書の中にも石けんのことが書かれている から、紀元前からあったわけだ。
石けんを発明し たのはガリア人かゲルマン人で、脂肪と木の葉を まぜて作ったこうやくのようなものだったらし い。
本格的に製造されはじめたのは八世紀の北イタリア、港町のサボナという所だった。
日本でも 石けんのことをシャボンといい、仏語ではサボンというのは、おそらくサボナの町名からきたのだろう。
イタリアからフランスへはいったのは十三 世紀、ロンドンではじめて作られたのは1524年のことだ。
日本では、文政五年(1822年)の『遠西医 方名物考』に石けんの話があり、そのころはいってきたものと思われる。
安政7年(1860年)に宇田川興斎という人の書いた『万宝新書』に、「バレイショヲ用イテ 錫布水(せんたくみず)ヲ製スル法」という一文 がのっている。

バレイショヲヨク洗イ、外皮ヲ去リ、ワサビオロシニテ細ニケズリ、コシブクロニテォシツブ ス。ソノ澱(かす)ハノリト為スベク、ソノ澄 (うわずみ)ハ即チ錫布水ナリ。コノ水ヲ用イテ 洗エバ妙ニソノ色アセズシテ、従前ノ張力光沢ヲ 生ゼシム。

つまりこんなものが、石けんのかわりになっていたのである。
面白いことに、石けんはそもそも 洗たくのために作られたのではなかったようだ。
紀元一世紀にプリニウスという人の書いた有名な 『博物誌』の中には石けんは、ガリア人が頭髪に赤い光沢を生ぜしむるために発明した、とある。
また、日本にだいぶ輸入されるようになった徳川時代には、もっぱらシャボン玉として使われた。
その後、薬としても用いられ「護誤解凝丸」「石ケン解凝丸」などという丸薬が珍重された。
明治時代にはいってはじめて浴用、洗たく用に使われ るようになり、明治6年からは大量に製造されは じめた。


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