お相撲さんの、いわば芸名をシコ名という。
四股をふむお相撲さんの名前だから四股名だというのは、どうやらアテ字のようで、自分をへりくだっていうシコ (醜)名というのが本来のようだ。
このシコ名には、昔からいろいろと風変わりなのがあって、江戸時代の番付から拾ってみると、 鉄壁破右衛門、釘貫鉄蔵、鬼勝象之助、鈴鹿山鬼一郎、仁王仁太夫などと、いかにも強そうなのが並んでいる。
横綱を張った名力士にも、稲妻雷五郎、不知火諾右衛門、雲竜久吉、鬼面山谷五郎、大砲万右衛門などがある。
名は体をあらわしているのが、釈迦ヶ岳雲右衛門、生月鯨太左衛門、大空武左衛門などで、これらの力士はいずれも七尺五寸(約二メートル三〇 センチ)前後の巨漢ぞろい。
なかでも大関まで昇進した釈迦ヶ岳には、往来で二階にいる人からタバコの火を借りたなどというエピソードが伝えられている。
桟 (かけはし) 初五郎、柵(しがらみ)住右衛門、梁(うつはり) 富五郎、階 (きざはし)正右衛門、鋸(のこぎり)清吉、礎(いしずえ)松蔵などなど、昔は一字型も案外多かった。
出羽ノ海親方の最初の力士名が、やはり一字の「九」。
九が一字だから「いちじく」と読むわけだ。
これなども変わり種シコ名の横綱クラスかもしれない。
ひらがなのいは、いろはの先頭だから「かながしら」、逆にいろはがるたの最後の『京』を「かなどめ」と読ませた力士もいた。
文明開化の明治時代ともなると、シコ名のほうも電気灯光太郎とか、器機船源吾などと時代色が出てくる。
そのほか、寒玉子だの、唐辛(とうがらし)だの、片福面(かたおかめ)などと、人をくったようなものもある。
近年はさすがにあまり変わったシコ名は見当たらない。

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