歌は世につれ、世は歌につれ、とは いうものの、流行歌の歌詞というものは十年一日、千編一 律、どれを見てもだいたい同じような文句が並ん でいる。
広く大衆に歌われるという流行歌の性質 から「愛」とか「夢」とか「涙」とか、だいたい あるきまった用語が登場しないと、うけないものなのかもしれない。
そこで実際に、どんな歌詞が最も好まれるか調べてみた。
出来上がったものは ごらんのとおり、流行歌の作詞家を目ざす人に は、トラの巻ともなる重宝なデータである。
まず、戦後の流行歌の中から、比較的広く歌わ れたものを百八十曲選び出し、各々その一番の歌詞だけを対象に、出てくる用語の頻度を調べあげ た。
一つの歌詞中に同じ言葉が三回現われれば、 三と数え、「泣いて」「泣いたら」「泣けば」な どは一括して「泣く」に入れた。
他の用語の場合 も同じである。(カッコの中は出現回数) さて、その結果は・・・
トップの君(71)にはじまって、恋(48)、夢(46)、心(41)、胸(35)、涙(27)、ああ(25)、風(22)、かなし(22)と続く。
ここまでがベスト・テ ン。さらに、雨、思 い 出 (各21)、楽し(18)、命、今宵、せつない(各15)、ひとみ、 くちづけ、やさし、なつかし(各14)、ひとり (12)、淋し、鐘 (各11)、窓、忘れられぬ、しあわせ、あの人、ふるさと (各10)というところだ。
そこで、この結果にしたがって、ぜったい流行疑いなしの歌詞を作ってみた。
君のひとみを夢に見て
かなしい恋の思い出に
ひとりさびしく泣いた夜
忘れられぬああやさし君
窓うつ風に今宵また
心の君にくちづけし
胸にせつなくあの人と
呼べば涙の ああ鐘が鳴る

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