食われて生きのびる

草食動物が草や木の葉を食べ、その草食動物を肉食動物が襲い、肉食動物の死体は微生物によって分解されて土にかえり、また植物の養分になる。
生物の間には、常にこうした食って食われる関係がある。
これを食物連鎖という。
おもしろいことに、食われるものはいつも、食うものよりはるかに数が多く、順々に並べてみると、ちょうどピラミッドのようになる

たとえば、アフリカのタンザニアにあるセレンゲティ国立公園には、三百万頭を越える草食獣がいるが、これを襲う肉食獣はライオンが約千頭、 ヒョウが約五百頭など、草食動物よりはるかに少ないのである。
ちょっと考えると、この食物連鎖のピラミッドの頂点にあたる動物がいなくなれば、その下の動物は、天下晴れて繁栄することができるように思えるが、そうはいかない。

アメリカに有名な例がある。
アリゾナ州にあるケイバブ高原。
かつてはベイマツやトウヒのおい茂った豊かな森で、四千頭あまりのシカがすんでいた。
肉食獣のコヨーテやオオカミが襲って適当に間引くため、シカの全体数はほとんど増減しなかった。
ところが、一九〇六年に禁猟区に定められ、シカを保護するために、肉食獣を人間が組織的に殺し始めてから事態が変わった。
天敵のいなくなったシカは急速にふえ、二十年の間に十万頭にもなった。
ふえすぎたシカは、高原の木や草を食いつく し、餓えて次々に死んでいった。
ふた冬で六〇パ ーセントが死んだという。
こうして、一九四二年には、弱りきった八千頭のシカが残るだけになっ てしまった。
最盛期の一割以下に減ったわけだ。

シマウマやレイヨウ類(ウシ科)を襲うライオ ンの姿を見るとき、なんて恐ろしい動物なんだろうと思う。
しかし、強い者だけが勝つ人間社会の弱肉強食と違って、自然界では、強い動物が弱い動物を食うことによって、自然にバランスをとり、弱い種族が増えすぎて、共倒れになるのを防ぐ役割を果たしている。


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