「血の雨」といっても、ほんとうに血が降ってく るわけではない。
多くは、空中に舞い上がった土や花粉が、雨にとけこんで降ってくるもの。
黄色 または赤色である。
日本では、熊本県球磨郡五木村字地頭で、三十分間、黄色い雨の降ったことがあった。
一九〇一年三月九日、十日に、シチリヤ島のタオルミナに降った血雨は、サハラ砂漠から飛んできた土砂が混じったもの。
またオーストラリヤの メルボルンに降った血雨は、調べたところナシの樹のナメクジや油虫を殺す力があり、樹木には害がなく、おかげで梨園の害虫が駆除された。
黄色い雨は、歓喜の雨だといわれている。
釈迦が生まれてすぐ七歩あゆみ、右手をあげて「天上 天下唯我独尊」といわれたときに、九竜が天より下り、五色の温涼の水が突然降ってきた。
すなわち、釈迦の光明をもたらす血雨だったのである。
またハンガリーでは、五月に時ならぬ黄金色のしゅう雨の降ることがある。
「マリイの雨」といい、年老いた母は若い娘たちに、次のような悲しい物語を語って聞かせる。
十七歳のマリイは、ブ ダペストに近いある村に、女中奉公をしていた。
夜も昼も働かされたが、若いマリイには、この世が楽しかった。
その幸福も、最後にはマリイの身に恐ろしい不幸の種を植えつけて去ってしまった。
マリイは働く場所を求めてさまよったが、だれも不品行者として、相手にしてくれなかった。
雪の降るクリスマスの夜、マリイは美しい女の子を産みおとした。
女の子は、私生子であるがために育児院に送られ、生きがいを奪われたマリイは死んだ。
十六年たった。天国からマリイが下界を見ると、わが娘が金持の男のそばでもじもじしている。
マリイはありったけの力で天国から水をそそぎ、男を追い払った。
このマリイの雨が毎年、何人かの処女を護っている。

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